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"あらゆる情報に関心のある中国の諜報機関 「JSP440 THE DEFENSE MANUAL OF SECURITY : ISSUE..."

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あらゆる情報に関心のある中国の諜報機関
「JSP440 THE DEFENSE MANUAL OF SECURITY : ISSUE 2」と題されたこの防諜マニュアルの別添資料「F」と「G」には、中国とロシアを訪問する英政府関係者に対する注意事項が簡潔に書かれている。この中露スパイ活動に関する記述を比較して読むと、実に興味深いことが見えてくるのだ。まずは注意事項の主要点を引用しよう。

(ロシア用注意事項から引用)
厳しい国内経済事情により、ロシア連邦諜報機関(RFIS)はロシア経済を活性化する情報、科学技術情報およびロシアの政治的影響力を高める情報の収集を重視している。これには特許情報の盗取や西側の科学的発展に関する詳しい情報の入手などが含まれる。

これに加えて、RFISは政治情報やロシア諜報機関の伝統的な収集対象であるNATOなど西側の防衛・安全保障関連情報にも関心がある。

(中国用注意事項から引用)
中国の諜報活動は極めて広範であり、政治、軍事、商業、科学技術などすべての情報に対して旺盛な食欲を示す。中国は単に技術を盗み出し、これを分析・模倣するだけでは満足せず、今ではより詳細な生産技術や手法に関する情報の入手を試みている。

また、主要な軍事分野で西側に1世代後れを取る中国は、西側に追いつくため非合法手段で軍事技術を取得しようと努めている。こうして得られた兵器システムを敵対国家に売却することも英国にとって現実の危険となっている。

以上から分かるように、情報収集の対象に関する限り中露に大きな違いはない。しいて言えば、中国の情報収集対象がロシアに比べより幅広く、奥深いことことぐらいだろうか。

より興味深いのは、中露両国の情報収集方法に大きな違いがあることだ。注意事項からの引用を続けよう。

(ロシア用注意事項から引用)
対外諜報機関(SVR)と軍諜報部(GRU)は英国内外でこれらロシア諜報機関のために働く英国人をエージェントとしてリクルートしようとしているが、その場合、当初は重要性の低い支援業務から始まることが多い。

これらの諜報機関は常に、ロシアに対し意識的か無意識かを問わず協力するエージェントを勧誘すべくあらゆる種類の英国人を物色している。その対象は必ずしも重要情報にアクセスのある英国人だけとは限らない。

(中国用注意事項から引用)
中国の諜報活動はロシアのそれとは大きく異なる。中国人は情報(information)と諜報(intelligence)を区別しない。中国の情報に対する食欲は広範かつ無差別であるが、これは、特に科学技術分野において顕著である。

中国の諜報機関はエージェントを使わずに、友人をつくる。もちろん、中国には軍事、非軍事を問わずプロの諜報員が存在するが、彼らは様々な諜報収集機関の命令によって動く中国人の一般学生、ビジネスマン、中国内外国企業支店のローカルスタッフなどの裏に隠れている。

「information=情報」とは十分な分析を経ていない生の知識に過ぎないが、「intelligence=諜報」とは、これらの雑多な情報の中から専門家による分析を経て間違いないと判断された選りすぐりの情報のみを指す。

要するに、英諜報関係者が見た中露の違いはこうだ。ロシアの諜報機関は「information」よりも「intelligence」を重視し、プロの諜報部員が確度の高い情報を持っていそうな外国人を直接「一本釣り」しようとする。

これに対し、中国の諜報機関は「information」か「intelligence」かを問わず何にでも関心があるためか、プロの諜報部員よりも素人の一般中国人を前面に出し、間接的にターゲットから情報を得ようとする傾向があるというのである。

「information」と「intelligence」を区別するどころか、両者の違いすら十分理解されず、諜報機関など非合法活動をする悪い組織だと考えられている日本では説明が難しいのだが、これが中国とロシアの諜報活動の実態である。



- 英国の諜報機関が見た中国のスパイ活動 2009.10.23(Fri)  宮家 邦彦 (via nandato)

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