反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」が和歌山県太地(たいじ)町に団体幹部を長期派遣し、地元のイルカ漁に圧力をかけている。太地町は、隠し 撮り映像でイルカ漁を批判し、今春、米アカデミー賞を受賞した映画「ザ・コーヴ」の舞台。SSは日本に狙いを定めた活動で注目を集め、多額の寄付金を得る ようになったことから、今回も知名度の高い場所で存在感を示し、勢力の拡大を図るのが目的とみられる。SSは12月にオーストラリアから抗議船を出し、再 び調査捕鯨を妨害することも宣言し、“日本たたき”の姿勢を強めている。(佐々木正明)
動画配信、寄付金稼ぎ
太地町で活動しているのは、米環境保護局元捜査官で2年前にSSに加入した米国人、スコット・ウェスト氏(52)。
9月初めから、「ザ・コーヴ」で知られるようになった同町の畠尻湾に張りつき、撮影した動画像をインターネットに連日配信して、イルカ漁の実態を「告発」している。
ウェスト氏は観光ビザで来日し、12月上旬まで日本に滞在する。
SSが幹部を日本に長期派遣するのは初めてで、SSはさらに、12月以降も別のメンバーを派遣する意向を示している。
こうした活動を可能にしている背景には、SSの潤沢な財政状況がある。SSは2003年に初めて太地町に活動家を派遣。05年には捕鯨妨害を始め、07年 からは抗議船に米有料チャンネル「アニマル・プラネット」の撮影班を乗船させて、活動家たちを「海の英雄」に仕立て上げる番組「鯨戦争」の制作に協力する ようになった。
「鯨戦争」は同チャンネル史上、歴代2位の視聴者数を稼ぐ人気番組に。米国やオーストラリアなどでSSの知名度は飛躍的に 向上し、活動の原資にしている寄付金が急増した。04年は総額120万ドル(約1億円)だったのに対し、08年には396万ドルと3倍強にまで膨れあがっ た。
09年には米国の元テレビ司会者らから数百万ドルの大口寄付があり、総額は1千万ドルを突破している可能性が高い。
捕鯨関係者は「日本をたたくことで、収入が増えるビジネスモデルが確立され、SSにとって、日本が『金のなる木』となっている」と指摘する。
一方、太地町で9月末にいけす網が切られた事件では、かつてSSのメンバーだったオランダ人らがアムステルダムに設立した団体「ザ・ブラック・フィッシュ」が犯行声明を出した。
この団体は、水族館のショー用に売却されるイルカ漁の禁止を目指している。SSから分派した「シー・シェパード系過激団体」が“本家”のやり方を踏襲して、日本を標的にし始めたとみられる。
ウェスト氏は、日本への対決姿勢を強めている点について、「海洋生物が絶滅すれば地球が滅びる。日本は世界で最も海洋生物を殺す『犯罪行為』を続けており、地球環境にダメージを与えている。われわれは実力行使でこれを阻止する」と話している。
シー・シェパード和歌山に幹部常駐 日本たたき ビジネス化|産経関西: