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- Business Media 誠:時間と空間をゆがめるのが特徴——ジブリ・鈴木敏夫氏が見る日本アニメの現在と未来(後編) (1/5)
ハウルの声にキムタク(木村拓哉氏)を起用したのですが、みんなにいろいろ言われましたよね。「これでお客さんを呼ぼうとするのか」とか。だいたい言いたくないのですが、その時、僕や宮崎はキムタクってほとんど知らないんですよ。
真相を話すと、要するに「ハウルはどういう男か」ということなんです。僕と宮崎の間で共通に決めていたことがあるんです、「男のいい加減さを持ったやつ」と。そうすると、この声は誰にやってもらったらいいですか?
本当に悩んでいたのですが、そんなある時、木村さんの方から出演のご希望が来たんです。僕は宮さんよりは世の中のことが分かっているので、「確かに人気がある人だよなあ」と思いました。そこで、娘に「キムタクってどういう人なの?」と聞いてみたんです。そうしたら「いい男だよ」と言って、その次に「いろんなこと言うんだけど、真実味がないんだよね」と(笑)。「これはいける!」と思ったんです。
それでとにかく声を出してもらうと、もう宮さん大喜びですよ。あっという間にセリフをこなしていって、宮さんの直しはほとんどなし。だって、男のいい加減さなんて難しいですよ。昔で言うと、森繁久彌さんだったらできたでしょうね。今の役者さんは、みんな真面目じゃないですか。ただ逆に言うと、みんな幅がないんです。「お父さん役をやって」と言ったら、普通のお父さんしかできない。「いい加減なお父さんをやって」と言ってもできないんですよね。
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