「グレーゾーン金利がなくなると闇金が増える」という説は誤り(実証的に考える) - すー :
その昔、グレーゾーン金利がなくなるとヤミ金が増えるという主張を行った元議員がいたなと思って、それを実証してみた。
いちおう誰が言ったのかを調べ見てると、表題の内容を主張したのは岐阜4区選出で元国務相の金子一義という代議士のようである。表題の内容を主張する論者を「タイトル論者」と命名する。金子一義wiki
「出資法金利を下げて(消費者金融における)グレーゾーン金利をなくすと、みなさんヤミ金にはしるのではないか」 とNHKにて述べ高金利を擁護していた。
ヤミ金のグレーゾーン金利廃止は2007年末ということである。金子代議士によると2008年はヤミ金の勢力が増大するはずである。平成18年の第165回臨時国会において、「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」が可決・成立し、12月20日に公布されました。
改正貸金業法・多重債務者対策について
施行はwikiによると2007年12月19日である。
グレーゾーン金利廃止からまる1年、上の言説が正しかったのかを実証する。
ヤミ金は裁判所を通じて債権の回収を図ることができず特に恐喝、暴行等による自力救済により債権の回収を図ることは自明の理だろう。そこで、上記ヤミ金融事犯の増加はすなわちヤミ金の活動のバロメータと考えられる。
そこで調べてみると、警察庁が毎年発表する統計の「生活経済事犯の検挙状況」という統計において「ヤミ金融事犯」というところで統計が取られていることがわかった。ここで、「ヤミ金融事犯」とは警察庁の定義によると以下のようなものである。ヤミ金融事犯としては、出資法(高金利)違反事件及び貸金業法違反事件並びに貸金業に関連した詐欺、恐喝、暴行等の事件を計上している。
なるほど、統計的に見ると2007年11月末から景気後退が始まっており、さぞかし活発化したことだろう。統計の数字は全て、以下の警察庁の統計4ページから得ている。
平成20年中における生活経済事犯の検挙状況について
まずは件数から
結果として、ヤミ金融事犯の事件数推移は横ばいという感じである。平成18年からのグラフにするとグラフマジックが使えそうな感じもする。注目の平成19年→平成20年では減っている。
次は被害人員。これはタイトル論者の考えでは顕著に増える必要があるだろう。
ヤミ金融事犯の被害者数は平成16年に謎の山の影響を取り除いても、減少傾向といって良いだろう。平成19年→平成20年では減っている。
次は被害金額。これもタイトル論者の考えでは顕著に増えるだろう。
ヤミ金融事犯の被害額は長期傾向としては減っている。短期的に見ても、平成19年→平成20年では微減である。
というわけで、実証的には「グレーゾーン金利がなくなると闇金が増える」という仮説はとりあえず誤った仮説だったと考えて棄却できることがわかる。
とりあえず「グレーゾーン金利がなくなっても闇金は特に増えも減りもしない」が当面、正しいと考えて良いだろう。
なぜこのような違いが生じているのだろう。タイトル論者は暗黙の内に合法なサラ金から借りられない人がそのまま全員、違法な闇金から借りるという勝手な仮定をおいているためだろう。合法と違法には深くて長い断絶が存在している理由を。
第一に借りる側から見て、違法な闇金は取立方法が違法な方法(身体的・肉体的な外形力の行使や信用に対する何らかの行為を含むのは当然だろう)に依存している。このため、借りる側にとって予想不可能な危険があるため、非常に借りにくい。
第二に違法な闇金業者から見ても、取立は困難だし、取立たとしても、将来的に現在のグレーゾーン金利の取り戻しのように逆に取りたてられる危険がある。
第三に違法な闇金は刑事事件にもなるため大規模な活動できないため、被害者はたいして大きくなることができない。このため、違法な闇金業者が大規模な活動に必須な広告活動をできないので、闇金と被害者(借りる側)が出会う可能性も低く、被害は少なくなる。
この問題、よく考えると、合法と違法の壁は社会的合理人ならだれしも気づく通り、大きな違いがあるという常識を再認識しただけである。
逆に言えばタイトル論者は非常識ということか・・