『魏志倭人伝』などいう不確かなシナの記述を鵜呑みにして、
『古事記』『日本書紀』を偽書だという左翼学者の劣悪思考の虚妄
田中英道『やまとごころとは何か』(ミネルヴァ書房)
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その一。
遣唐使より遣日使の数が多かった、回数も多かったという事実はなぜか戦後左翼学者によって軽視されてきた。
意図的に「そんな筈がない」という先入観念があり、シナのほうが日本より一貫してまさっていたと誤解してきた。
鑑真とて、永住のつもりで日本にやってきた。しかし阿倍仲麻呂は、帰国の意思を最後まで捨てずにいた。シナに亡命したのではない。
田中氏はつぎのように言う。
鑑真のほかに「そのまま日本に居着いた例は、数多い。大和の長谷寺を開いた道明、経典の音読にあたって漢音の普及に尽力した道栄、なかでも知られているのは、律宗を弘め、天台・華厳二宗興隆の先駆となった道叡(どうせん)である。鑑真が連れてきた僧侶の中では、弟子の僧の十四人の他、胡国人安如宝、昆論国人軍法力、胆波国人<ベトナム>善聴ら二四人がいる」。
遣日使は「天智天皇の治世には、毎年のように」、「669年には朝散太夫郭務宋ら計二千余人、671年には計二千人と多数の船と唐人が来朝していることが記録されている」のである。
渤海からの遣日使は「約二百年のあいだに三十三回にわた」り、反対に日本からは十三回。つまり日本の二・五倍!
半世紀に数千人の留学生らが日本にきたという記録から推定すると、当時の人口から勘案して現代の日本に四十万人の留学生が犇めいていたことになる。実際に、在日中国人は80万人、留学生7-8万、日本にすでに帰化した中国人11万人。多くが巧みな日本語をあやつる。
対照的に中国に帰化した日本人はごく稀。中国への留学生は語学留学が90%、ほぼ全員が帰国する。赴任でいやいや中国へ行く日本人の過半は現地でも中国語を覚える意思さえない。
これらの事実と数字は何を物語っているのだろう?
その二。
魏志倭人伝なんぞ偽書に近い、いい加減な伝聞の史書なのに日本の学者で、古事記、日本書紀よりありがたがっているとんちんかん学者が山といる。
倭人と蔑み、卑弥呼などと差別的名称をあたえたが、まず日本の神話との関連性がない。
『不正確なものは信ずるに足りないのである』と田中氏は力説される。
例証の一つとして、前方後円墳の祖型が中国ではひとつも発見されていない事実がある。これは日本独自のもので、あきらかに天皇陵である。三角縁神獣鏡はシナ大陸でただの一個も発見されていない。
その三。
唐三彩はペルシア文化だ。
評者(宮崎)は「唐三彩」をながらく中国独自の文化遺産のひとつと錯覚してきた。まだ外国へ行ったこともない頃、父が中国へ行って、この唐三彩(レプリカ)を土産にかってきた。「これが中国だ」と言って。
遼寧省へ行くと遼三彩がある。独自に色づけされた焼き物だが、どうも漢族の文化ではない。中華の色彩とは無縁で、金、遼の文化遺産だろうと考えていた。しかし中央アジアへいくと、カザフ人もキルギス人もウズベク人もトルクメニスタンも、突厥からでたトルコ系民族であり、それを厳密にわけるのは言葉と色彩だ。カザフカラーとウズベクカラーはまったく趣が違う。その差異を旅行者が見分ける術はない。微妙な色彩の差違が民族の壁を表し、現地の人でないとわからない。
ペルシアは中央アジアの民族とは異なり、ペルシア語とアラブ語は微妙に異なり、そして民族がまったく違う。ペルシア絨毯の色彩は、ウズベクやパキスタンの絨毯とはまるで違うように。
さて唐三彩だが、十年ほど前にテヘランの『ガラス美術館』で、同じものをみて唸った。(嗚呼、そうか)。長安は胡人と呼ばれた外国人、とくにペルシア人が多かった。ペルシア王朝が滅びたとき王族が大挙して長安に亡命した。金銀財宝を駱駝に積んで運んだ。♪『月の砂漠をはるばると』。
つまり唐には詩歌はあれど、芸術的遺産は中華風ではない。いや唐王朝そのものも鮮卑族である。詩聖・李白は漢族ではなかった。そうそう、後世の鄭和も漢族ではなかった。かれはイスラム教徒で本名は馬、胡人だった。
その四。
仏教文化の位置づけを訂正する必要がある。
田中氏はこうも説かれる。
「中国史ではその多くの時期に、遊牧系の非漢族政権(北魏、遼、金、元、清)に支配され、彼らがいずれも仏教を重視することである。この仏教文化を漢文化と混同することは誤りである。これらの遊牧民の民族は、一貫して外来の仏教を取り入れ、王朝儀礼として「中国」古来の祭祀よりも、仏教寺院の儀礼を執り行っていた」、「長安の都市構造そのものが、この華厳経の説く無限世界(百億千世界)の、大きな蓮の花に抱かれた城郭都市の姿」だった。
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