“2)「NHKの提供者志向なB級グルメ絶賛」は、市民を豊かにさせない。
「B級グルメの光と影」について私は今、本1冊書ける程度の調査を進めています。
ここでは、読者の時間を考慮して、影の部分を箇条書きで整理します。
①食を活かした町づくりは全国各地で行われているが、B級グルメはその一部にすぎない。
例えば、昔ながらの地元産の「蕎麦を活かした町づくり」は盛んだが、マスコミは注目しない。
②B級グルメのうち、B1グランプリに出場資格は、某団体に加盟した50弱の地域に限られる。
B級グルメに取り組む地域の一部にすぎないB1出場地域は、食を活かした町づくりの1%未満。
③以上のように、食を活かした町づくりに取り組む地域の99%以上は
「B級グルメの定義」と「特定団体加盟者のみが注目される仕組み」に無関心もしくは
違和感を抱き、B級グルメ・ブームに背を向けている。
④なのに、なぜマスコミは、食の一部にすぎないB級グルメばかり注目して加熱報道するのか。
⑤食の1%未満のB級グルメだけを偏って注目する報道は、民間放送局ならいざしれず、世間から
中立な報道と認識されるNHKがブーム終焉の今頃、報道するのに強烈な違和感を覚える。
⑥NHKの報道が、B級グルメの“光”の部分に、例えば富士宮市などB級グルメ・ブームで
観光客が大挙して訪れる一部の成功事例(富士宮モデル)に注目した報道をすれば、
富士宮モデルの上辺だけを模倣する地域が続出する。
⑦つまり、富士宮モデルは近隣に有名な観光地が幾つもあるから
「観光ついでの30分だけランチ滞在の観光客」を集めることができるのであり、
観光資源の不足する他都市が上辺を模倣しても成功できない。
⑧また、富士宮市民の多くは全く豊かさを感じていない。
⑨このように、B級グルメ地域は(福岡県久留米市等を除く)殆どが、「地域活性化」を
錦の御旗に掲げてはいるが、実は飲食店業界だけが豊かになる「業界活性化」が実態である。
⑩町づくりに活用される「食」は、地域に古くから伝承される文化と地域食材に光を当てて、
市民が地域愛と共に育んでいくもの。しかし、現在のB級グルメはB1グランプリで
勝って有名になることが目的化され、「勝てる料理」を新たに開発する本末転倒な取組が目立つ。
⑪X氏メールに書かれる「横手など大手企業とのタイアップ」とは、昨年B1グランプリで優勝した
秋田県横手市の「横手やきそば」が優勝1ヶ月後に、井村屋とタイアップして中華まん
「横手やきそばまん」を発売。同社の中華まんシリーズで肉まんに次ぐ二番目の売上を記録した
人気商品となる。このヒットを見た大手企業は
「こういう商品でB1グランプリに出場しませんか。資金やノウハウなら幾らでも協力しますよ」と、
地方都市の町おこし関係者にタイアップを申し出ている。
B1グランプリ優勝の横手やきそばと富士宮やきそばは、ともに大手企業から
「カップ焼きそば」が発売されている。尚、井村屋の横手やきそばまんは流通が大都市に集中し、
地元の秋田県では入手が困難で、これもB級グルメが地元市民からは悪評な理由となる。
⑫こうして、B級グルメ取組は、いかにして「勝てるか、大手企業の協力を得るか、そして
利益を上げるか」に目を奪われ、地域の伝統・郷土食や市民の存在に目が向かなくなっている。
食を活かした町づくり「本来の意義」が忘れられている。
つまり、地域の食材を使う伝統ある郷土食を通して市民の交流が促進される。
観光者にとって、郷土食を「地域の生活文化も含めて」体験することが観光の醍醐味。
こういう体験志向な観光客は滞在時間も長く、消費の対象・金額も波及効果が大きい。
⑬B級グルメ業界(飲食店)は、市民の居場所、地元の食材・人材を使う取組、すなわち
「市民が豊かになる、市民志向なスローフード」へ進化させて
地域全体が豊かになる意識改革が求められる。これこそ真の問題解決である。
⑭しかし、NHKメールの番組方針を見ると、NHKも飲食店と同じく「提供者目線」で、
市民を蔑ろにしていることが解る。市民が豊かになるスローフード視点が大切だとは言いながら、
B1グランプリ参加者(つまり飲食店=提供者)にその意識が無いから、
Bー1グランプリ参加団体(提供者側)の個別事情をクローズアップすると言う。
⑮NHKの志向と思考は、かなり国民(市民)目線からズレている。
業界おこしだけに目を奪われている飲食店など「提供者」の声を拾う取材をすれば、
(市民志向なスローフードに無関心な)提供者の本音だけが集まるのは当然。
その提供者の声を基準に、NHKが提供者団体側だけの事情を報道すれば、
多くの市民は無関心か反発は必至。
⑯以上は『地域再生の罠』で示した成功事例集の構図と同じである。
このように、専門家もマスコミも、視点(カメラ)はいつも提供者側に置いて、
提供者の成功は僅かな効果でも絶賛して過剰に宣伝する。
提供者の課題は隠蔽するか解決せよと声高に叫んで提供者の応援団を買ってでる。
『地域再生の罠』では、こういう専門家とマスコミの提供者目線の弊害と、それに対して
市民はどんなに怒り白けているかを解き明かした。NHKは『地域再生の罠』を読んで
共感したから、私に番組作成の知恵をくれと取材を申し込んできたのだが…”
- 久繁哲之介の地域力向上塾 (via nakano)
「B級グルメの光と影」について私は今、本1冊書ける程度の調査を進めています。
ここでは、読者の時間を考慮して、影の部分を箇条書きで整理します。
①食を活かした町づくりは全国各地で行われているが、B級グルメはその一部にすぎない。
例えば、昔ながらの地元産の「蕎麦を活かした町づくり」は盛んだが、マスコミは注目しない。
②B級グルメのうち、B1グランプリに出場資格は、某団体に加盟した50弱の地域に限られる。
B級グルメに取り組む地域の一部にすぎないB1出場地域は、食を活かした町づくりの1%未満。
③以上のように、食を活かした町づくりに取り組む地域の99%以上は
「B級グルメの定義」と「特定団体加盟者のみが注目される仕組み」に無関心もしくは
違和感を抱き、B級グルメ・ブームに背を向けている。
④なのに、なぜマスコミは、食の一部にすぎないB級グルメばかり注目して加熱報道するのか。
⑤食の1%未満のB級グルメだけを偏って注目する報道は、民間放送局ならいざしれず、世間から
中立な報道と認識されるNHKがブーム終焉の今頃、報道するのに強烈な違和感を覚える。
⑥NHKの報道が、B級グルメの“光”の部分に、例えば富士宮市などB級グルメ・ブームで
観光客が大挙して訪れる一部の成功事例(富士宮モデル)に注目した報道をすれば、
富士宮モデルの上辺だけを模倣する地域が続出する。
⑦つまり、富士宮モデルは近隣に有名な観光地が幾つもあるから
「観光ついでの30分だけランチ滞在の観光客」を集めることができるのであり、
観光資源の不足する他都市が上辺を模倣しても成功できない。
⑧また、富士宮市民の多くは全く豊かさを感じていない。
⑨このように、B級グルメ地域は(福岡県久留米市等を除く)殆どが、「地域活性化」を
錦の御旗に掲げてはいるが、実は飲食店業界だけが豊かになる「業界活性化」が実態である。
⑩町づくりに活用される「食」は、地域に古くから伝承される文化と地域食材に光を当てて、
市民が地域愛と共に育んでいくもの。しかし、現在のB級グルメはB1グランプリで
勝って有名になることが目的化され、「勝てる料理」を新たに開発する本末転倒な取組が目立つ。
⑪X氏メールに書かれる「横手など大手企業とのタイアップ」とは、昨年B1グランプリで優勝した
秋田県横手市の「横手やきそば」が優勝1ヶ月後に、井村屋とタイアップして中華まん
「横手やきそばまん」を発売。同社の中華まんシリーズで肉まんに次ぐ二番目の売上を記録した
人気商品となる。このヒットを見た大手企業は
「こういう商品でB1グランプリに出場しませんか。資金やノウハウなら幾らでも協力しますよ」と、
地方都市の町おこし関係者にタイアップを申し出ている。
B1グランプリ優勝の横手やきそばと富士宮やきそばは、ともに大手企業から
「カップ焼きそば」が発売されている。尚、井村屋の横手やきそばまんは流通が大都市に集中し、
地元の秋田県では入手が困難で、これもB級グルメが地元市民からは悪評な理由となる。
⑫こうして、B級グルメ取組は、いかにして「勝てるか、大手企業の協力を得るか、そして
利益を上げるか」に目を奪われ、地域の伝統・郷土食や市民の存在に目が向かなくなっている。
食を活かした町づくり「本来の意義」が忘れられている。
つまり、地域の食材を使う伝統ある郷土食を通して市民の交流が促進される。
観光者にとって、郷土食を「地域の生活文化も含めて」体験することが観光の醍醐味。
こういう体験志向な観光客は滞在時間も長く、消費の対象・金額も波及効果が大きい。
⑬B級グルメ業界(飲食店)は、市民の居場所、地元の食材・人材を使う取組、すなわち
「市民が豊かになる、市民志向なスローフード」へ進化させて
地域全体が豊かになる意識改革が求められる。これこそ真の問題解決である。
⑭しかし、NHKメールの番組方針を見ると、NHKも飲食店と同じく「提供者目線」で、
市民を蔑ろにしていることが解る。市民が豊かになるスローフード視点が大切だとは言いながら、
B1グランプリ参加者(つまり飲食店=提供者)にその意識が無いから、
Bー1グランプリ参加団体(提供者側)の個別事情をクローズアップすると言う。
⑮NHKの志向と思考は、かなり国民(市民)目線からズレている。
業界おこしだけに目を奪われている飲食店など「提供者」の声を拾う取材をすれば、
(市民志向なスローフードに無関心な)提供者の本音だけが集まるのは当然。
その提供者の声を基準に、NHKが提供者団体側だけの事情を報道すれば、
多くの市民は無関心か反発は必至。
⑯以上は『地域再生の罠』で示した成功事例集の構図と同じである。
このように、専門家もマスコミも、視点(カメラ)はいつも提供者側に置いて、
提供者の成功は僅かな効果でも絶賛して過剰に宣伝する。
提供者の課題は隠蔽するか解決せよと声高に叫んで提供者の応援団を買ってでる。
『地域再生の罠』では、こういう専門家とマスコミの提供者目線の弊害と、それに対して
市民はどんなに怒り白けているかを解き明かした。NHKは『地域再生の罠』を読んで
共感したから、私に番組作成の知恵をくれと取材を申し込んできたのだが…”
- 久繁哲之介の地域力向上塾 (via nakano)